連結会計・子会社の期末貸倒引当金の修正[日商簿記2級(商業)講座]
今回は日商簿記2級における子会社の貸倒引当金の修正について学習します。
子会社の期末貸倒引当金の修正
連結財務諸表を作成する場合、連結会社間の債権債務の残高を消去するため子会社側でも相殺処理をしなければいけません。
例題を通して確認してみましょう。
ひまわり商事㈱はいちご商事㈱の発行済株式の60%を取得し、支配している。
次の取引について、当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。
[取引]当期末におけるいちご商事㈱の貸借対照表には、ひまわり商事㈱に対する売掛金8,000円が計上されており、いちご商事㈱はこの売掛金に対して5%の貸倒引当金を設定している。
子会社の期末貸倒引当金の修正仕訳
今回は子会社側の仕訳処理を行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 8,000 | 売掛金 | 8,000 |
そして、減額した売掛金に対する貸倒引当金を修正します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | 400 | 貸倒引当金繰入 | 400 |
次に、子会社の貸倒引当金を修正する場合は修正額を非支配株主に負担させます。
具体的には変動する損益項目の金額(貸倒引当金繰入)に、非支配株主持分割合を掛けた金額を、変動する損益項目の逆側に非支配株主に帰属する当期純損益として記入します。
今回の額は400円×40%=160円となります。
相手科目は非支配株主持分当期変動額(純資産)として記入します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
非支配株主に帰属する当期純損益 | 160 | 非支配株主持分当期変動額 | 160 |
3つをあわせて
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 8,000 | 売掛金 | 8,000 |
貸倒引当金 | 400 | 貸倒引当金繰入 | 400 |
非支配株主に帰属する当期純損益 | 160 | 非支配株主持分当期変動額 | 160 |
となります。
前期末の貸倒引当金の修正
次に、前期末に貸倒引当金の減額修正をしている場合の仕訳も確認しておきましょう。
ひまわり商事㈱はいちご商事㈱の発行済株式の60%を取得し、支配している。
次の取引について、当期の連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。
[取引]当期末におけるいちご商事㈱の貸借対照表には、ひまわり商事㈱に対する売掛金8,000円が計上されており、いちご商事㈱はこの売掛金に対して5%の貸倒引当金を設定している(差額補充法)。
なお、前期末におけるひまわり商事㈱に対する売掛金にかかる貸倒引当金は300円であった。
親会社の期首貸倒引当金の修正の場合と同様に、前期末に行った貸倒引当金の減額修正の処理と、非支配株主への按分処理を当期に行います。
このとき、前期末に行った連結修正仕訳について損益項目は利益剰余金当期首残高で処理します。
また、前期末に行った連結修正仕訳のうち純資産項目に関しては当期首残高で処理します。
したがって開始仕訳は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | 300 | 利益剰余金当期首残高 | 300 |
利益剰余金当期首残高 | 120 (300円×40%(非支配株主持分)) |
非支配株主持分当期首残高 | 120 |
前期末の連結修正仕訳は
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | 300 | 貸倒引当金繰入 | 300 |
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
非支配株主に帰属する当期純損益 | 120 | 非支配株主持分当期変動額 | 120 |
でちゅ
次に、当期末の貸倒引当金の減額修正をおこないます。
今回のケースでは、いちご商事㈱はひまわり商事㈱に対する売掛金に対して、貸倒引当金400円(8,000円×5%)を設定し、差額補充法によって貸倒引当金繰入100円(400円-300円)を計上しています。
個別会計上の貸倒引当金の設定は以下の通りでちゅ
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金繰入 | 100 | 貸倒引当金 | 100 |
そこで、当期に追加計上した貸倒引当金(100円)を減額修正し、その減額修正分も非支配株主に負担させます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | 100 | 貸倒引当金繰入 | 100 |
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
非支配株主に帰属する当期純利益 | 40 (100円×40%(非支配株主持分)) |
非支配株主持分当期変動額 | 40 |
以上より、連結修正仕訳は以下のようになります。
債権債務の相殺仕訳
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
買掛金 | 8,000 | 売掛金 | 8,000 |
開始仕訳
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | 100 | 利益剰余金当期首残高 | 100 |
利益剰余金当期首残高 | 40 | 非支配株主持分当期首残高 | 40 |
貸倒引当金の減額修正
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | 100 | 貸倒引当金繰入 | 100 |
非支配株主への按分
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
非支配株主に帰属する当期純損益 | 40 | 非支配株主持分当期変動額 | 40 |
子会社の期末貸倒引当金の修正・例題
例題を解いて慣れていきましょう。
問題
金額は3桁ごとにカンマで桁区切りをして半角で入力すること(iOSの一部の環境以外は自動入力されます)。
(例:現金 500、商品 1,000,000)
また、仕訳が複数行に渡る場合、金額の多い物から順に書き、不要なところは空白のままにしておくこと。
使える勘定科目は以下のものとする。
勘定科目:[売掛金][買掛金][貸倒引当金][貸倒引当金繰入][非支配株主持分当期変動額][非支配株主に帰属する当期純損益]
問1
A社はB社の発行済株式の60%を取得し、支配している。
B社の当期の貸借対照表には、A社に対する売掛金60,000円が計上されている(前期末におけるA社に対する売掛金はない)。
なお、売掛金には毎期5%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
解答(クリックで展開)
子会社の期末貸倒引当金の修正・まとめ
今回は子会社の期末貸倒引当金の修正について学習しました。親会社の処理だけでなく非支配株主持分への負担額も意識しておきましょう。
次回は手形取引の相殺について学習します。
福井県産。北海道に行ったり新潟に行ったりと、雪国を旅してます。
経理4年/インフラエンジニア7年(内4年は兼務)/ライター5年(副業)
簿記2級/FP2級/応用情報技術者/情報処理安全確保支援士/中小企業診断修得者 など
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