中小企業診断士におすすめの副業は?現役診断士がリアルを語る

中小企業診断士を取得すると、独立開業だけでなく副業として活動する道も開かれます。
一方で、下記のような不安を感じる方も多いです。


この記事では、副業診断士として活動するために知っておきたい基本ルールと注意点を解説します。
中小企業診断士は副業可能!【ただしルールの理解が重要】

中小企業診断士は国家資格の中でも副業との相性が良い資格です。
ただし、どの会社でも自由に副業できるわけではありません。まずは勤務先のルールを確認し、守秘義務や利益相反を回避することが前提です。
副業が認められる会社と認められない会社の違い
副業を始める前に確認すべき最初のポイントは、勤務先の就業規則です。近年は政府による働き方改革の影響で、副業を認める企業が増えています。
厚生労働省も2018年以降「モデル就業規則」を改定し、副業を推奨する方向性を示しています。
ただし、現実には企業によって対応が異なります。以下は代表的な分類です。
| 会社の方針 | 副業可否 | 対応の特徴 |
| 副業推奨企業 (例:大手IT・商社) |
◯ | 事前申請のみで副業可能。 申請後は比較的自由に活動できる。 |
| 条件付きで許可する企業 | △ | 届出制で内容審査あり。 業種や報酬額に制限が設けられる場合もある。 |
| 副業禁止企業 (例:製造・金融など一部業界) |
× | 利益相反や情報漏洩リスクを懸念し、原則禁止としている。 |
副業が認められない場合でも、社外勉強会への参加やボランティア型の経営支援など、収益を伴わない活動で実務経験を積む方法もあります。
守秘義務・利益相反に注意
中小企業診断士が副業を行う場合、注意すべきなのは守秘義務と利益相反です。
診断士は経営状況・財務情報など、企業の機密に触れる機会が多いため、情報管理が甘いと信頼を失うだけでなく、法律トラブルにつながる可能性もあります。
特に以下の点には注意が必要です。
- 本業の取引先や競合企業に関わる案件を受けない
- クライアント情報を社内やSNSに共有しない
- 副業で知り得たデータを本業で利用しない
これらは「中小企業診断士倫理規程」にも明記されており、違反すれば資格停止処分を受けるおそれがあります。
また、報酬を得る副業の場合、税務上の処理も忘れてはいけません。副業で得た所得は「雑所得」または「事業所得」に区分され、確定申告が必要になります。
適切な申告を行い、クライアントや勤務先からの信頼を損なわないようにしましょう。

中小企業診断士の副業内容と働き方

中小企業診断士の副業にはさまざまな形があります。本業との両立がしやすい案件も多く、経験を積みながら将来的な独立を視野に入れられます。
公的支援機関での経営相談(商工会議所・自治体)
| 項目 | 内容 |
| 難易度 | ★☆☆(登録・書類選考あり) |
| 報酬相場 | 5,000〜10,000円/時 |
| 初心者オススメ度 | ★★★(実務経験・人脈構築に最適) |
商工会議所・商工会・自治体などでは、中小企業や個人事業主への経営相談員を随時募集しています。
登録制のケースが多く、都道府県協会や自治体の公募ページから申し込みが可能です。
相談内容は、資金繰り・補助金・売上向上策などが中心で、診断士としての知識を実務で試せる貴重な機会になります。
補助金・事業計画書支援
| 項目 | 内容 |
| 難易度 | ★★☆(実績・採択経験があると有利) |
| 報酬相場 | 成果報酬型:採択額の5〜10%前後(1件あたり10〜50万円程度) |
| ★★☆(中級者向け) |
「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」など、補助金支援は副業診断士の代表的な業務です。
企業の課題を整理し、採択されるための計画書を作成します。成果報酬型の案件が多く、採択率は50〜70%前後が一般的です。
最近では、クラウドマッチングサイトを通じて企業から直接依頼を受けるケースも増えています。経験を積むと、補助金支援から顧問契約への発展も期待できます。
企業の顧問・経営改善コンサル
| 項目 | 内容 |
| 難易度 | ★★★(信頼・実績が必要) |
| 報酬相場 | 月5〜15万円(顧問契約) |
| ★☆☆(上級者向け) |
中小企業やベンチャー企業を対象に、経営課題の改善や事業計画策定を支援する顧問業務です。
業績分析・人材育成・販売戦略など、テーマに応じた継続的なコンサルティングを行います。

副業として始める場合は、まず補助金支援や経営相談で実績を作り、その延長で顧問契約に発展させる流れが現実的です。
企業側にとっても「実務経験のある診断士」は貴重な存在であり、独立を目指す前段階の経験値としても価値が高い業務です。
セミナー講師・執筆・監修活動
| 項目 | 内容 |
| 難易度 | ★★☆(専門分野の発信力が必要) |
| 報酬相場 | ・講師:3〜10万円/回 ・執筆:5,000〜30,000円/記事 |
| 初心者オススメ度 | ★★★(発信が得意な人に最適) |
商工会・大学・研修機関などで開催される経営セミナーや社員研修の講師として登壇するほか、Webメディアや専門誌での寄稿、書籍の監修・執筆なども副業の一形態です。
テーマは経営戦略・補助金の活用・財務分析・DX導入など多岐にわたります。
特にSNSやブログで情報発信をしている診断士は、メディアや団体からの依頼が増える傾向です。
講師・執筆活動は単なる副収入にとどまらず、個人ブランドの確立や案件獲得の導線づくりにも直結します。知識を伝える力がある方ほど、活動範囲を広げやすい分野です。
副業を始める手順と案件獲得の流れ

中小企業診断士として副業を始めるには、闇雲に営業するよりも公的制度や登録制度を活用して着実に実績を積むことが重要です。
未経験からでも案件を獲得できる具体的な方法を確認しましょう。
公的機関・協会に登録する
副業を始める際の第一歩は、中小企業診断協会や商工会議所など公的機関への登録です。
公的機関では、経営相談員や専門家派遣制度など、診断士が副業として参加できる案件を定期的に募集しています。
たとえば、都道府県の中小企業診断協会では「経営改善支援」「事業承継支援」などの相談業務があり、登録しておくことで、自治体や商工会からの依頼を受ける機会が増えます。
報酬は1時間あたり5,000〜10,000円前後が一般的で、実務ポイントの獲得や人脈形成にも直結します。
また、診断士としての信頼を高めるうえでも、公的業務の実績は大きな強みになります。

マッチングサイト・知人紹介を活用
近年は、クラウドマッチングサイトや専門家紹介サービスを通じて副業案件を獲得する診断士も増えています。
代表的なプラットフォームは以下の通りです。
| サービス名 | 特徴 |
| ビザスク | スポットコンサル形式。1時間単位で案件を受託可能。報酬は1〜3万円/件程度。 |
| ココナラビジネス | 経営相談や補助金支援を中心に、個人依頼も多い。 |
| SMEサポート(地方自治体系) | 補助金申請や経営改善支援の継続案件が中心。 |
特にビザスクは登録診断士も多く、スキマ時間を使って副業を始めやすい点が魅力です。
また、過去に支援した経営者からの紹介経由で継続案件が生まれることも多く、信頼を積み重ねることで報酬単価も上がっていきます。
SNS・ブログ発信で直接依頼を得る
SNSやブログで診断士としての知見を発信することは、指名依頼を得る効果的な手段です。
特にX(旧Twitter)やnoteでは、経営改善・補助金・財務分析などのテーマで発信している診断士が多く、「投稿を見て相談したい」と直接依頼を受けるケースが増えています。
ブログでは「補助金 申請 事例」「経営改善 コンサル」などの検索ワードを意識して記事を書くことで、企業経営者や他士業からの問い合わせにつながります。
SNS発信はすぐに案件化しないこともありますが、専門性と人柄を伝えるブランディング活動として継続する価値があります。信頼が積み重なれば、講師依頼や顧問契約にも発展します。
中小企業診断士が副業するメリット・デメリット
- 実務経験・人脈・収入を同時に得られる
- 自分の得意分野を見極められる
- 本業にも役立つ知見や視野を得られる
- 時間管理と本業への影響
- 残業との両立・納期リスク
中小企業診断士が副業するメリットとデメリットについても確認しておきましょう。
メリット
中小企業診断士が副業を行う最大の利点は、実務・人脈・収入の3つを同時に得られる点です。
特に、企業内で働く診断士にとっては、理論で学んだ経営知識を副業の現場で実践できる貴重な機会になります。
副業で経営相談や補助金申請を経験すれば、実務ポイントが貯まり独立登録に必要な条件を満たせるだけでなく、実際の企業支援を通じて、自分の得意分野を見極めることも可能です。
また、支援先や他士業との関わりから新しい人脈が広がり、本業にも役立つ知見や視野を得るケースも多く見られます。
報酬面でも、週末の経営相談や補助金支援だけで月5〜10万円の副収入を得ることができます。
活動を継続すれば、講師依頼や顧問契約に発展し、キャリアアップと収入増を同時に実現できます。
デメリット
副業診断士が直面しやすい課題は、時間管理と本業への影響です。
診断士の副業は、平日夜間や週末に依頼が集中しやすく、納期や打ち合わせのスケジュール調整が難しくなりがちです。
本業が繁忙期に入ると、副業の準備が後回しになり、報告書や申請書の納期を守れなくなるリスクもあります。
その結果、クライアントとの信頼関係を損なう恐れがあります。副業を継続するには、スケジュール管理と優先順位付けが不可欠です。具体的には以下のような工夫を心がけましょう。
- 平日夜は1〜2時間の作業時間を確保する
- 案件を詰め込みすぎず、月2〜3件に限定する
- 作業用カレンダーを本業と分けて管理する
副業を成功させる診断士ほど、自分のリソースを正確に把握し、無理のない範囲で成果を出す習慣を持っています。
時間管理を徹底すれば、本業への悪影響を防ぎながら安定して副業を継続できます。
副業から独立へのステップアップ事例
中小企業診断士の多くは、いきなり独立するのではなく副業から段階的に実務経験を積むケースが一般的です。リスクを抑えつつ、信頼と実績を構築できる現実的なルートを紹介します。
- STEP1公的支援で実務経験を積む商工会議所や自治体の経営相談業務に参加し、経営課題のヒアリングや提案スキルを磨きます。
この段階で実務ポイントを取得し、資格登録や信用の土台を築きます。
- STEP2補助金・計画策定支援で実績を作る補助金申請や経営改善計画の作成を通じて、成果物として残る支援実績を積み重ねます。
採択率が上がるほど信頼が高まり、他士業や公的機関からの依頼が増えます。
- STEP3顧問契約・継続支援に発展させる補助金支援や相談対応で成果を出すと、企業から継続支援を依頼されるようになります。
月5〜15万円の顧問契約が複数成立すれば、副業収入が本業を上回る段階に入ります。
- STEP4独立準備として顧客基盤と収入源を整える固定顧客が数社つき、年間収入の見通しが立った段階で独立を検討します
。
事務所開設・保険・税務などの手続きを進め、独立後も安定した収益を確保します。 - STEP5独立後は専門分野を確立しブランディングへ独立後は得意業界(例: 製造・IT・飲食など)を明確にし、補助金・顧問・セミナーなどを組み合わせて活動を拡大します。
SNS・ブログ・講演活動を通じて発信を続ければ、指名依頼や紹介案件も増加します。
このように、副業から始めることで実務・人脈・収益の3要素を少しずつ積み上げられます。
リスクを抑えながら独立できる点は、中小企業診断士という資格の大きな魅力です。
副業診断士はキャリアを試せる実践の場
中小企業診断士の副業は、単なる副収入の手段ではありません。経営支援を通じて実務経験・人脈・信用を同時に得られる実践の場です。
公的支援や補助金業務で得た経験は、本業にも活かせる知見になります。継続して取り組めば、顧問契約や講師依頼などへ発展し、将来の独立にもつながります。
一方で、時間管理や本業とのバランスは欠かせません。無理のない範囲で活動を続け、信頼と実績を積み重ねることで、副業からキャリアアップへと確実にステップを踏めます。
「本業を活かしながら専門性を広げたい」「将来は独立を見据えたい」という方にとって、中小企業診断士の副業は最適なキャリア投資です。

福井県産。北海道に行ったり新潟に行ったりと、雪国を旅してます。
職歴:経理4年/インフラ・アプリエンジニア9年(内4年は兼務)/ライター7年
保有資格:簿記2級/FP2級/応用情報技術者/情報処理安全確保支援士/中小企業診断士 など




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