組織市民行動|中小企業診断士 令和7年第1次試験 企業経営理論 問17

出典:令和7年度 第1次試験問題 企業経営理論 第17問 分野:企業経営理論 / 組織文化
「組織市民行動」とは、組織メンバーがとる自己裁量的な行動であり、公式の報酬制度による明確な見返りが保証されるわけではないが、組織運営に有効に役立つ個人行動を指す概念である。
D. オーガンによると、組織市民行動は5つの次元(市民道徳、スポーツマン精神、誠実さ、丁重さ、利他主義)から構成される。これらの構成次元に則した組織市民行動の代表的な行動例に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア:「市民道徳」に基づく組織市民行動とは、関係者の時間を無駄にしないために、義務でない会議には出席しない行動を指す。
  • イ:「スポーツマン精神」に基づく組織市民行動とは、自分の弱みを同僚に開示して、職場のチームワーク強化を図る行動を指す。
  • ウ:「誠実さ」に基づく組織市民行動とは、上司の監視の目がなければ、労働時間中でも仕事に関係のない雑談をして職場の雰囲気を和らげる行動を指す。
  • エ:「丁重さ」に基づく組織市民行動とは、関係者に対して事前に報告や相談をすることで、関係者に問題が起こらないように配慮する行動を指す。
  • オ:「利他主義」に基づく組織市民行動とは、仕事で困っている同僚がいても助けの手を差し伸べず、本人の責任を明確にする行動を指す。
解説

この問題では、組織市民行動の5つの次元について、それぞれがどのような行動を指すかを区別することが問われています。

構成要素 英語 意味
利他主義 Altruism 同僚や上司など、他の人を自発的に助ける行動
誠実さ Conscientiousness 最低限求められる水準を超えて、規則や手続、勤務上のルールなどを誠実に守る行動
礼儀正しさ
(丁重さ)
Courtesy 他者への配慮や尊重を示し、問題や対立が起こるのを事前に防ごうとする行動
スポーツマンシップ Sportsmanship 不都合や困難な状況でも、過度に不平や不満を言わず受け入れる態度
市民の美徳
(市民道徳)
Civic Virtue 組織の活動や発展に関心を持ち、会議や組織運営などに積極的に関わる行動

丁重さとは、他者に迷惑や問題が生じないように、事前に情報共有・相談・調整を行う行動を指します。自分の行動が関係者に影響を与える可能性がある場合に、あらかじめ配慮する点が特徴です。

エは、関係者に対して事前に報告や相談を行い、問題が起こらないように配慮する行動であるため、丁重さに基づく組織市民行動として適切です。

したがって、エが適切です。

❌他選択肢が誤りの理由
ア 「市民道徳」に基づく組織市民行動とは、関係者の時間を無駄にしないために、義務でない会議には出席しない行動を指す。
⇒市民道徳は、組織の活動や意思決定に関心をもち、会議への参加や情報収集などを通じて組織運営に積極的に関与する行動です。義務でない会議に出席しない行動とは異なります。
イ 「スポーツマン精神」に基づく組織市民行動とは、自分の弱みを同僚に開示して、職場のチームワーク強化を図る行動を指す。
⇒スポーツマン精神は、不平不満を過度に言わず、多少の不都合や困難を前向きに受け止める行動です。自己開示によるチームワーク強化を指すものではありません。
ウ 「誠実さ」に基づく組織市民行動とは、上司の監視の目がなければ、労働時間中でも仕事に関係のない雑談をして職場の雰囲気を和らげる行動を指す。
⇒誠実さは、規則や勤務時間を守り、監視がなくても責任ある行動をとることです。仕事に関係のない雑談を労働時間中に行うことは、誠実さに基づく行動とはいえません。
オ 「利他主義」に基づく組織市民行動とは、仕事で困っている同僚がいても助けの手を差し伸べず、本人の責任を明確にする行動を指す。
⇒利他主義は、仕事で困っている同僚を自発的に助ける行動です。助けずに本人の責任を明確にする行動は、利他主義とは反対の内容です。
TSUNAGARU-ADVICE

まず押さえたいこと

組織市民行動は、公式な職務や報酬制度に明確に含まれないものの、組織全体の円滑な運営に役立つ自発的な行動です。オーガンの5次元では、利他主義は同僚を助ける行動、丁重さは事前の配慮や連絡、市民道徳は組織活動への積極的参加、スポーツマン精神は不満を過度に言わず受け止める姿勢、誠実さは規則や職務を良心的に守る行動として整理します。

迷ったときの判断軸

選択肢では、行動が「周囲への配慮」「同僚への支援」「組織への参加」「不満への態度」「良心的な職務遂行」のどれに当たるかを見分けましょう。丁重さは、関係者に迷惑や問題が生じないように、事前に報告・相談・連絡を行う行動です。一方、困っている同僚を助けない行動や、監視がなければ雑談する行動は、組織市民行動とはいえません。

2次試験につなげるために

この論点は企業経営理論であり、2次試験の事例Ⅰに強くつながります。答案では、従業員の自発的な協力行動を高める施策として、相互支援、情報共有、事前相談、職場内コミュニケーション、納得感のある評価制度などを結び付けて説明すると、組織活性化やモラール向上の提案に説得力が出ます。