プライシング|中小企業診断士 令和7年第1次試験 企業経営理論 問31
出典:令和7年度 第1次試験問題 企業経営理論 第30問
分野:企業経営理論 / プライシング
プライシングに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア:価格を消費者による「支出の痛み」として捉えれば、価格は安いほど売れ行きは伸びることになるが、他方で価格を「品質のバロメーター」や「プレステージ」として捉えれば、必ずしも安い価格の方が売れ行きが伸びるとは言えない。
- イ:顧客によって異なる価格を提示するプライシングは、鉄道サービスにおける学割やホテル業界におけるメンバーシップ制度などに見られるように古くから行われてきたが、時期によって価格を変えるプライシングが行われるようになったのは、デジタル・マーケティングによるダイナミック・プライシングが浸透した近年になってからである。
- ウ:サブスクリプションは、製品やサービスの所有権の移転を行わずに使用する権利だけを販売するものであり、音楽や映像などがデジタル化され所有権の移転を行わずに転送できるようになったことなどに示されるように、デジタル時代になって誕生した新しい契約形態である。
- エ:自社製品を有利に扱ってくれる流通業者に対して、メーカーは割引価格などの金銭的見返りを提供することが多い。そのうち短期的な金銭的見返りは一般的にリベートと呼ばれ、長期的に提供されるアローワンスと区別される。
TSUNAGARU-ADVICE
まず押さえたいこと
プライシングでは、価格を単なる「安さ」だけで捉えないことが重要です。消費者にとって価格は支出の痛みである一方、品質の高さやブランドの格、希少性を示す手がかりにもなります。そのため、価格を下げれば必ず売れるとは限らず、商品特性や顧客の知覚によっては、高い価格が価値を高めることもあります。
迷ったときの判断軸
価格の問題では、「安いほどよい」という需要曲線だけでなく、価格が顧客にどのような意味を持つかを確認しましょう。高価格が品質・信頼・ステータスのシグナルになる商品では、値下げがかえってブランド価値を下げることがあります。一方、時期による価格変更や利用権を販売する仕組みは、デジタル時代以前から存在しており、「近年になって初めて誕生した」といった言い切りには注意が必要です。
2次試験につなげるために
この論点は企業経営理論であり、2次試験の事例Ⅱに強くつながります。答案では、価格を下げて販売量を増やす発想だけでなく、ターゲット顧客、ブランドイメージ、品質訴求、競合との差別化、継続利用の仕組みを踏まえて価格を考えると、マーケティング施策としての説得力が高まります。
この問題では、価格が消費者に与える心理的意味と、各種プライシング手法の特徴を区別して判断することが問われています。
価格は、消費者にとって支出の負担として捉えられる場合があります。この場合、価格が低いほど購入しやすくなり、売れ行きが伸びやすくなります。
一方で、価格は品質の高さを判断する手掛かりや、ステータスを示す要素として捉えられることもあります。その場合、価格が低すぎると品質への不安や高級感の低下につながることがあり、必ずしも安いほど売れるとはいえません。
したがって、アが適切です。
❌他選択肢が誤りの理由イ 顧客によって異なる価格を提示するプライシングは、鉄道サービスにおける学割やホテル業界におけるメンバーシップ制度などに見られるように古くから行われてきたが、時期によって価格を変えるプライシングが行われるようになったのは、デジタル・マーケティングによるダイナミック・プライシングが浸透した近年になってからである。
⇒時期によって価格を変える方法は、繁忙期・閑散期の料金、早期割引、季節料金などとして以前から行われてきました。デジタル・マーケティングの浸透後に初めて行われるようになったわけではありません。
ウ サブスクリプションは、製品やサービスの所有権の移転を行わずに使用する権利だけを販売するものであり、音楽や映像などがデジタル化され所有権の移転を行わずに転送できるようになったことなどに示されるように、デジタル時代になって誕生した新しい契約形態である。
⇒サブスクリプションは、新聞・雑誌の定期購読など、デジタル時代以前から存在していた契約形態です。デジタル化によって広がった面はありますが、デジタル時代に誕生した新しい契約形態ではありません。
エ 自社製品を有利に扱ってくれる流通業者に対して、メーカーは割引価格などの金銭的見返りを提供することが多い。そのうち短期的な金銭的見返りは一般的にリベートと呼ばれ、長期的に提供されるアローワンスと区別される。
⇒一般に、リベートは取引量や販売実績などに応じて後から支払われる販売奨励金を指します。一方、アローワンスは、棚割り・広告・販促協力などに対して支払われる手当を指します。短期か長期かでリベートとアローワンスを区別する説明は不適切です。