組織のネットワーク理論|中小企業診断士 令和7年第1次試験 企業経営理論 問22

出典:令和7年度 第1次試験問題 企業経営理論 第22問 分野:企業経営理論 / 組織間関係
組織のネットワーク理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア:D.ワッツとS.ストロガッツによると、スモールワールド・ネットワークでは、ランダムなつながりを増やすと、ネットワーク全体の平均経路長(average path length)は長くなり、情報の流通は困難になる。
  • イ:M.グラノヴェッターによると、交流の機会が少なく信頼関係が薄い「弱い紐帯」は、やりとりされる情報の範囲を限定し、イノベーションに必要な新しい知識やアイデアを伝わりにくくする。
  • ウ:M.グラノヴェッターによると、頻繁に顔を合わせ、強い信頼関係のもとで協力し合う「強い紐帯」は、メンバー同士の結束を深めることで、組織の柔軟性を高め、環境の変化に迅速に適応できるようにする。
  • エ:R.バートによると、同じ業界に属し競争関係にある組織同士が構造同値の関係にある場合、目的や価値観を共有しやすいため、連携して協調関係を構築しやすい。
  • オ:R.バートによると、ソーシャル・ネットワークの中で構造的空隙の間に位置する組織は、仲介者の役割を担うことで、ネットワーク上の多様な情報を入手し、情報の優位性を得ることができる。
解説

この問題では、組織のネットワーク理論におけるスモールワールド・ネットワーク、弱い紐帯、構造的空隙の考え方を区別して判断することが問われています。

R.バートの構造的空隙とは、ネットワーク上で直接つながっていない集団や組織の間にあるすき間を指します。その間に位置する組織や個人は、異なる集団を仲介することで、多様な情報にアクセスしやすくなります。

R.バートの構造的空隙ダウンロード

構造的空隙に位置する主体は、情報をいち早く得たり、異なる知識を結び付けたりできるため、ネットワーク上の情報優位性を得やすいです。

したがって、オが適切です。

❌他選択肢が誤りの理由
ア D.ワッツとS.ストロガッツによると、スモールワールド・ネットワークでは、ランダムなつながりを増やすと、ネットワーク全体の平均経路長(average path length)は長くなり、情報の流通は困難になる。
⇒スモールワールド・ネットワークでは、少数のランダムなつながりが加わることで、平均経路長は短くなりやすく、離れた相手にも情報が届きやすくなります。説明が逆です。
イ M.グラノヴェッターによると、交流の機会が少なく信頼関係が薄い「弱い紐帯」は、やりとりされる情報の範囲を限定し、イノベーションに必要な新しい知識やアイデアを伝わりにくくする。
⇒グラノヴェッターの弱い紐帯の強さでは、弱い紐帯は異なる集団をつなぎ、新しい情報やアイデアをもたらしやすいとされます。情報の範囲を限定するという説明は不適切です。
ウ M.グラノヴェッターによると、頻繁に顔を合わせ、強い信頼関係のもとで協力し合う「強い紐帯」は、メンバー同士の結束を深めることで、組織の柔軟性を高め、環境の変化に迅速に適応できるようにする。
⇒強い紐帯は信頼や協力を高めますが、同質的な情報に偏りやすく、新しい情報の獲得や柔軟な変化への対応では弱い紐帯の方が有効になる場合があります。柔軟性を高めると一般化する点が不適切です。
エ R.バートによると、同じ業界に属し競争関係にある組織同士が構造同値の関係にある場合、目的や価値観を共有しやすいため、連携して協調関係を構築しやすい。
⇒構造同値とは、ネットワーク上で似た位置にあることを指し、同じ相手と取引したり似た資源にアクセスしたりするため、むしろ競争関係になりやすいと考えられます。協調関係を構築しやすいという説明は不適切です。
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まず押さえたいこと

組織のネットワーク理論では、つながりの数だけでなく、どの位置にいるか、どのような関係で結ばれているかが重要です。構造的空隙とは、互いに直接つながっていない集団や組織の間にあるすき間を指します。その間に位置する組織は、異なる集団を仲介することで、多様な情報を得やすくなります。

迷ったときの判断軸

グラノヴェッターの弱い紐帯は、新しい情報やアイデアをもたらしやすい点がポイントです。強い紐帯は信頼や協力には有効ですが、同質的な情報に偏りやすい面があります。ワッツとストロガッツのスモールワールドでは、少数のランダムなつながりによって平均経路長が短くなり、情報が届きやすくなります。バートの構造的空隙は、離れた集団をつなぐ仲介者の情報優位として押さえましょう。

2次試験につなげるために

この論点は企業経営理論であり、2次試験の事例Ⅰ・Ⅱに関係します。答案では、既存顧客や社内の近い関係だけに頼るのではなく、異業種、外部専門家、大学、地域団体、販売先などとの弱いつながりを活用して、新しい情報・販路・製品アイデアを得る、という形で説明できると、組織間連携や新規事業の提案に結び付けやすくなります。