業界の構造分析|中小企業診断士 令和7年第1次試験 企業経営理論 問7

出典:令和7年度 第1次試験問題 企業経営理論 第7問 分野:企業経営理論 / 競争戦略
ある業界では、次のような特徴が見られる。

・新規参入には、大規模な設備や高度な専門技術が必要で、初期投資も多額になる。また、業界の参入規制に従うための許可取得にも時間を要する。
・撤退する際は、当該設備を他業界に転用でき、契約の解消もスムーズに進むため、撤退時の負担は比較的小さい。

「業界の構造分析」の考え方に従った場合、この業界における競争の特質に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア:参入障壁が高く、撤退障壁が低い業界であるため、新規参入は控えられる一方、低業績の企業は撤退しやすくなることから、業界の収益性は高くなりやすい。
  • イ:参入障壁も撤退障壁も低いため、不採算企業が市場に残りやすく、業界の競争が激化して業界の収益性は低下しやすくなる。
  • ウ:新規参入が制限されるとともに、競争力の低い企業が撤退しやすくなることから、市場の集中度は低下し、業界の競争は緩やかになりやすい。
  • エ:新規参入は慎重に行われるものの、撤退コストが低いため、多くの企業は業界にとどまり続け、結果として業界の競争は激しくなりやすい。
  • オ:撤退が容易であるため、新規参入に対する動機は高まり、結果として、業界の競争の激化と収益性の低下が長期的に進みやすい。
解説

この問題では、参入障壁と撤退障壁の組み合わせから、業界の収益性や競争の激しさを判断することが問われています。

5フォース分析ダウンロード

大規模な設備、高度な専門技術、多額の初期投資、許可取得が必要であるため、この業界は参入障壁が高いといえます。そのため、新規参入企業は入りにくくなります。

一方、撤退時には設備の転用ができ、契約解消もスムーズであるため、撤退障壁は低いといえます。業績の悪い企業が退出しやすいため、過当競争が続きにくく、業界の収益性は高くなりやすいです。

したがって、アが適切です。

❌他選択肢が誤りの理由
イ 参入障壁も撤退障壁も低いため、不採算企業が市場に残りやすく、業界の競争が激化して業界の収益性は低下しやすくなる。
⇒本問の業界は、大規模設備・高度な専門技術・多額の初期投資・許可取得が必要であるため、参入障壁は高いです。また、撤退時の負担は小さいため、撤退障壁は低いです。
ウ 新規参入が制限されるとともに、競争力の低い企業が撤退しやすくなることから、市場の集中度は低下し、業界の競争は緩やかになりやすい。
⇒新規参入が制限され、低業績企業が撤退しやすい場合、市場に残る企業数は増えにくくなります。そのため、市場の集中度が低下するとはいえません。
エ 新規参入は慎重に行われるものの、撤退コストが低いため、多くの企業は業界にとどまり続け、結果として業界の競争は激しくなりやすい。
⇒撤退コストが低い場合、低業績企業は市場から退出しやすくなります。多くの企業が業界にとどまり続けるという説明は、撤退障壁が高い場合に近いです。
オ 撤退が容易であるため、新規参入に対する動機は高まり、結果として、業界の競争の激化と収益性の低下が長期的に進みやすい。
⇒撤退が容易であっても、本問では参入に大規模設備・高度な専門技術・多額の初期投資・許可取得が必要です。そのため、新規参入が高まりやすいとはいえません。
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まず押さえたいこと

業界構造分析では、参入障壁と撤退障壁の組み合わせによって、業界の収益性や競争の激しさが変わります。参入障壁が高いと新規参入が起こりにくく、撤退障壁が低いと業績の悪い企業が市場から退出しやすくなります。そのため、参入障壁が高く、撤退障壁が低い業界は、比較的収益性が高くなりやすいと考えます。

迷ったときの判断軸

問題文では、大規模設備・高度な専門技術・多額の初期投資・許可取得に時間がかかることから、参入障壁は高いと判断できます。一方、設備を他業界に転用でき、契約解消もスムーズであるため、撤退障壁は低いと判断できます。つまり、新規参入は抑えられ、不採算企業は退出しやすいため、過当競争になりにくい構造です。

2次試験につなげるために

この論点は企業経営理論であり、2次試験の事例Ⅰ・Ⅱに関係します。答案では、業界環境を述べる際に「競争が激しい」と一言で終わらせず、参入障壁・撤退障壁・代替品・買い手や売り手の交渉力などに分けて説明できると、外部環境分析の説得力が高まります。