垂直統合|中小企業診断士 令和7年第1次試験 企業経営理論 問5
出典:令和7年度 第1次試験問題 企業経営理論 第5問
分野:企業経営理論 / 企業戦略
垂直統合と市場取引に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア:市場取引から垂直統合に転換すると、市場取引の時よりも暗黙知や文脈依存的な知識は活用されにくくなる。
- イ:市場取引は垂直統合に比べて調整の効率性が高く、機会主義的行動の発生を抑制できる。
- ウ:垂直統合された組織では、市場取引の時に比べて、コストを削減したり機能や品質を向上させたりするインセンティブは高まる。
- エ:特定の取引相手しか供給できない財を調達する場合、市場取引よりも垂直統合が選択される傾向がある。
- オ:取引する財が標準化されている場合、市場取引よりも垂直統合が選択される傾向がある。
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まず押さえたいこと
垂直統合と市場取引の違いは、取引を社内で行うか、外部の市場に任せるかです。垂直統合は、取引相手を社内に取り込むことで調整しやすくなり、機密性の高い情報や暗黙知を活用しやすくなります。一方、市場取引は競争原理が働きやすく、標準化された財の調達に向いています。
迷ったときの判断軸
垂直統合が選ばれやすいのは、取引する財やサービスが特殊で、特定の取引相手に依存しやすい場合です。このような場合、市場取引では相手の機会主義的行動や交渉コストが問題になりやすいため、社内に取り込むメリットが大きくなります。反対に、標準化された財で代替的な取引相手が多い場合は、市場取引の方が柔軟で効率的になりやすいです。
2次試験につなげるために
この論点は企業経営理論であり、2次試験の事例Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに関係します。答案では、「内製化すべきか、外注すべきか」を考える場面で、単なるコスト比較だけでなく、品質管理、ノウハウ蓄積、取引先依存、調整コスト、柔軟性をセットで整理すると説得力が高まります。
この問題では、垂直統合と市場取引のどちらが選択されやすいかを、取引コストや取引特殊性の観点から判断することが問われています。
垂直統合とは、原材料の調達、生産、販売など、取引関係にある活動を自社内部に取り込むことです。一方、市場取引は、外部企業との契約によって財やサービスを調達する方法です。
特定の取引相手しか供給できない財を調達する場合、取引相手への依存度が高まり、価格交渉や供給停止などのリスクが大きくなります。このような取引特殊性が高い場合には、市場取引よりも垂直統合が選択されやすくなります。
したがって、エが適切です。
❌他選択肢が誤りの理由ア 市場取引から垂直統合に転換すると、市場取引の時よりも暗黙知や文脈依存的な知識は活用されにくくなる。
⇒垂直統合では、組織内部で継続的に調整できるため、暗黙知や文脈依存的な知識を活用しやすくなる場合があります。「活用されにくくなる」とする点が誤りです。
イ 市場取引は垂直統合に比べて調整の効率性が高く、機会主義的行動の発生を抑制できる。
⇒市場取引では、契約や交渉を通じた調整が必要であり、取引相手の機会主義的行動が問題になることがあります。調整や機会主義の抑制では、垂直統合が有利になる場合があります。
ウ 垂直統合された組織では、市場取引の時に比べて、コストを削減したり機能や品質を向上させたりするインセンティブは高まる。
⇒市場取引では、競争圧力によってコスト削減や品質向上のインセンティブが働きやすいです。垂直統合では内部化により競争圧力が弱まり、インセンティブが低下する場合があります。
オ 取引する財が標準化されている場合、市場取引よりも垂直統合が選択される傾向がある。
⇒財が標準化されている場合、複数の供給者から調達しやすく、取引特殊性も低くなります。そのため、垂直統合よりも市場取引が選択されやすくなります。