ICカードを導入したビルの物理的セキュリティ課題|情報セキュリティマネジメント 令和8年 公開問題 問13
出典:令和8年度 公開問題 科目B 問13
分野:科目B / 情報セキュリティを継続的に確保するための情報セキュリティ要求事項の提示
A社は,従業員300名の専門商社であり,機密性の高い情報も取り扱っている。最近,A社は,駅前のBビルの6階に移転した。6階にはA社だけが入居している。
Bビルの2階から最上階の17階には多数の企業が入居しており,通常時はエレベーターを使用して各階に移動することができる。Bビルのビル管理業務はB社が行っている。B社はビルの入退館と入居企業の執務エリアの入退室を管理するシステム(以下,Cシステムという)を導入している。各入居企業は,Cシステムが発行するICカード(以下,Bカードという)を従業員に貸与している。各入居企業の執務エリアの出入口のドアは,当該企業が従業員に貸与したBカードをドア横のICカードリーダーにかざすことによって解錠できる。
Bビルのエントランスホールは1階にあり,エレベーターホールとの境界には,フラッパーゲートが設置されている。フラッパーゲートを通過するには,フラッパーゲートのリーダーにBカード又は入館用に一時的に発行されたQRコードをかざす必要がある。フラッパーゲートを通過すれば,平日の昼間はエレベーターの行先階ボタンを押すことで各階に自由に移動ができる。夜間と休日は,行先階の入居企業が従業員に貸与したBカードをエレベーター内のICカードリーダーにかざす必要がある。
フラッパーゲートのすぐ外には階段室に入るための階段口があり,階段口にある非常ドアは通常時,エントランスホールには出られるが,階段室には入れない仕組みになっている。ほかの階の階段口にある非常ドアは通常時,各フロアには出られないが,階段室には入れる仕組みになっている。ただし,どの階の非常ドアも清掃時などに一時的に出入り可能になることがある。また,非常時は自動的に出入り可能になる。フラッパーゲートの脇にはごみ箱が設置されている。
〔来訪者管理〕
Bビルへの来訪者は,Cシステムで管理している。入居企業がCシステムに,来訪者氏名,所属,来訪日,来訪者メールアドレスを登録すると,来訪日にだけ有効なゲスト入館用のQRコード付き入館証(以下,ゲスト入館証という)の画像ファイルが添付された電子メールが来訪者メールアドレスに送付される。来訪者は,来訪日当日に有効なゲスト入館証のQRコードを自身のスマートフォンの画面に表示するか又は印刷してフラッパーゲートのリーダーにかざすことによってフラッパーゲートを通過できる。当日に限り,同じ入館証で繰り返し入退館が可能なようにCシステムは設定されている。
〔Bビルの物理的セキュリティにおける課題とB社への依頼〕
ある日,突然,取引先のD社のE氏が予約なしに,A社の情報セキュリティリーダーのF部長を訪ねて6階の受付エリアにやって来た。驚いたF部長は,E氏が来たことをきっかけにBビルの物理的セキュリティについて調査し,複数の課題があることを発見した。そして,F部長はその課題とB社への依頼を表1にまとめた。
表1 Bビルの物理的セキュリティにおける課題と B社への依頼(抜粋)
設問 次の依頼のうち,表1中の[ a1 ],[ a2 ]に入れるものの組合せはどれか。aに関する解答群のうち,最も適切なものを選べ。
(一)Cシステムの設定を変更し,ゲスト入館証のQRコードの誤り訂正レベルの設定を高くする。
(二)Cシステムの設定を変更し,ゲスト入館証は1回限り入館可能にする。
(三)エレベーターで行先階に移動するためには,平日の昼間もICカードリーダーにBカードをかざすことを必要とする。そのため,各入居企業には,当該企業の従業員が1階のエレベーター前から当該企業まで来訪者をアテンドするよう要請する。
(四)警備員を1階のフラッパーゲート脇に配置し,不正に入館しようとしている者がいないかどうかを監視する。
| 項番 | 課題 | B社への依頼 |
| 1 | フラッパーゲート脇に設置されたごみ箱から印刷された使用済のゲスト入館証を拾えば,1 階のフラッパーゲートを通過し入館できてしまう。 | [ a1 ] |
| 2 | 6 階以外への来訪者が,ゲスト入館証で1階のフラッパーゲートを通過すれば,平日の昼間はエレベーターで6階に移動できてしまう。 | [ a2 ] |
| a1 | a2 | |
| ア | (一) | (二) |
| イ | (一) | (三) |
| ウ | (二) | (一) |
| エ | (二) | (三) |
| オ | (二) | (四) |
| カ | (三) | (一) |
| キ | (三) | (二) |
| ク | (三) | (四) |
| ケ | (四) | (一) |
| コ | (四) | (二) |
- ア:
- イ:
- ウ:
- エ:
- オ:
- カ:
- キ:
- ク:
- ケ:
- コ:
TSUNAGARU-ADVICE
まず押さえたいこと
この問題では、来訪者管理の仕組みを追いながら、「正規の入館手段が第三者に悪用される余地」と「入館後に自由に移動できる余地」を見つけることが重要です。ゲスト入館証が当日中は繰り返し利用できると、他人が入手したQRコードを再利用するリスクがあります。また、平日の昼間はフラッパーゲートを通過した後に任意の階へ移動できるため、目的階までのアクセス制御も十分ではありません。
事例を読むときの判断軸
科目Bでは、設備があるだけで「安全」と判断せず、その運用条件や例外まで確認しましょう。この事例では「同じ入館証で繰り返し入退館可能」「平日の昼間は各階に自由に移動可能」「ごみ箱がゲート脇にある」といった記述が手掛かりです。一方、QRコードの誤り訂正レベルは読み取りやすさに関する設定であり、不正利用そのものを防ぐ対策ではないと切り分けます。
上位試験につなげるために
上位試験では、不正侵入という結果だけでなく、「どの仕組みが悪用されたか」「どの管理策が不足していたか」「再発防止として何を変更すべきか」まで因果関係を整理する力が求められます。来訪者用資格情報の再利用防止、目的階へのアクセス制限、社員によるアテンドなど、認証・認可・人的管理策を組み合わせて多層的に考える習慣を付けましょう。

この問題では、表1の「どの仕組みを悪用すると課題が生じるのか」を確認し、その原因を直接取り除く対策を選ぶことがポイントです。a1とa2では、問題となっている仕組みが異なります。
a1では、ゲスト入館証が「当日に限り、同じ入館証で繰り返し入退館可能」であるため、使用済みの入館証を拾った第三者でも再利用できてしまいます。そこで(二)のようにゲスト入館証を1回限り入館可能にすることで、使用済みQRコードの再利用を防止できます。
a2では、平日の昼間はフラッパーゲートを通過した後、エレベーターでどの階にも自由に移動できることが問題です。そこで(三)のように、昼間も行先階に対応するBカードを必要とし、来訪者は訪問先企業の従業員がアテンドする仕組みにすれば、他社への来訪者が勝手に6階へ移動することを防げます。したがって、a1が(二)、a2が(三)のエが適切です。
❌他選択肢が誤りの理由ア:a1:(一)、a2:(二)
⇒(一)の誤り訂正レベルは、QRコードの一部が汚れたり欠けたりしても読み取れるようにするための設定です。使用済みQRコードの再利用防止にはなりません。また、(二)は入館証の再利用には有効ですが、フラッパーゲート通過後に別の階へ自由に移動できるa2の問題は解決できません。
イ:a1:(一)、a2:(三)
⇒(三)はa2への対策として適切ですが、(一)はa1の使用済みゲスト入館証の再利用を防止する対策ではありません。
ウ:a1:(二)、a2:(一)
⇒(二)はa1への対策として適切ですが、QRコードの誤り訂正レベルを高くしても、来訪者がエレベーターで別の階へ移動できる問題は解決できません。
オ:a1:(二)、a2:(四)
⇒(二)はa1への対策として適切です。一方、(四)の警備員による監視は不正入館の抑止にはなりますが、正規のゲスト入館証で入館した他社への来訪者が6階へ移動できるというa2の原因を直接解消できません。
カ:a1:(三)、a2:(一)
⇒(三)はエレベーターによる行先階の制限なのでa2への対策です。(一)はQRコードの読み取り性能に関する設定であり、a2の対策にはなりません。
キ:a1:(三)、a2:(二)
⇒(三)はa2への対策であり、使用済みゲスト入館証の再利用というa1の問題には対応していません。また、(二)だけではフラッパーゲート通過後の階間移動を制限できません。
ク:a1:(三)、a2:(四)
⇒(三)はa2に対応する対策ですが、a1には対応していません。(四)も監視による抑止策であり、使用済みQRコードを再利用できる仕組み自体は残ります。
ケ:a1:(四)、a2:(一)
⇒(四)は警備員による監視であり、使用済み入館証をシステム上再利用できるa1の原因を直接取り除く対策ではありません。(一)もa2の階間移動を制限する対策ではありません。
コ:a1:(四)、a2:(二)
⇒(四)はa1への根本的な対策ではなく、(二)もa2のエレベーターによる自由な階間移動を防止する対策ではありません。