セキュリティリスクを考慮したバックアップ手法|情報セキュリティマネジメント 令和4年 サンプル問題 問54

出典:令和4年度 サンプル問題 科目B 問54 分野:科目B / 情報資産に関する情報セキュリティ要求事項の提示
 A社は旅行商品を販売しており,業務の中で顧客情報を取り扱っている。A社が保有する顧客情報は,A社のファイルサーバ1台に保存されている。ファイルサーバは,顧客情報を含むフォルダにある全てのファイルを磁気テープに毎週土曜日にバックアップするよう設定されている。バックアップは2世代分が保存され,ファイルサーバの隣にあるキャビネットに保管されている。  A社では年に一度,情報セキュリティに関するリスクの見直しを実施している。情報セキュリティリーダーであるE主任は,A社のデータ保管に関するリスクを見直して図1にまとめた。
1.ランサムウェアによってデータが暗号化され,最新のデータが利用できなくなることによって,最大1週間分の更新情報が失われる。 2.(省略) 3.(省略) 4.(省略)

図1 A社のデータ保管に関するリスク(抜粋)

 E主任は,図1の1に関するリスクを現在の対策よりも,より低減するための対策を検討した。 設問 E主任が検討した対策はどれか。解答群のうち,最も適切なものを選べ。 解答群
  • ア:週1回バックアップを取得する代わりに,毎日1回バックアップを取得して7世代分保存する。
  • イ:バックアップ後に磁気テープの中のファイルのリストと,ファイルサーバのバックアップ対象フォルダ中のファイルのリストを比較し,差分がないことを確認する。
  • ウ:バックアップに利用する磁気テープ装置を,より高速な製品に交換する。
  • エ:バックアップ用の媒体を磁気テープからハードディスクに変更する。
  • オ:バックアップを二組み取得し,うち一組みを遠隔地に保管する。
  • カ:ファイルサーバにマルウェア対策ソフトを導入する。
解説

この問題では、ランサムウェアによって最新データが使えなくなった場合に、失われる更新情報を最大1週間分より少なくするにはどうすればよいかを考えます。

現在は毎週土曜日に1回だけバックアップを取得しているため、例えば金曜日にランサムウェア被害が発生すると、直近の土曜日以降に更新されたデータ、つまり最大で約1週間分が失われる可能性があります。

(ア)のように毎日1回バックアップを取得すれば、被害発生時に失われる更新情報を最大でも約1日分まで減らせます。さらに7世代分を保存しておけば、過去の複数時点から復旧できるため、現在よりリスクを低減できます。したがって、が最も適切です。

試験では、「失われるデータ量を減らしたい=バックアップ間隔を短くする」と考えるのがポイントです。

❌他選択肢が誤りの理由
イ:バックアップ後に磁気テープの中のファイルのリストと,ファイルサーバのバックアップ対象フォルダ中のファイルのリストを比較し,差分がないことを確認する。
⇒バックアップ漏れや設定ミスを確認する対策です。バックアップの取得頻度は週1回のままなので、最大1週間分の更新情報が失われるリスクは減りません。
ウ:バックアップに利用する磁気テープ装置を,より高速な製品に交換する。
⇒バックアップや復旧に要する時間の短縮にはつながりますが、バックアップ間隔が週1回のままなら、失われる更新情報の量は変わりません。
エ:バックアップ用の媒体を磁気テープからハードディスクに変更する。
⇒媒体を変更するだけでは、バックアップ取得頻度が週1回であることは変わりません。そのため、最大1週間分の更新情報が失われるリスクの低減には直接つながりません。
オ:バックアップを二組み取得し,うち一組みを遠隔地に保管する。
⇒火災や地震などでファイルサーバとバックアップ媒体が同時に被害を受けるリスクへの対策としては有効です。しかし、バックアップ頻度が週1回のままなので、ランサムウェアによって最大1週間分の更新情報が失われる点は改善されません。
カ:ファイルサーバにマルウェア対策ソフトを導入する。
⇒ランサムウェア感染の可能性を下げる対策としては有効ですが、本問で問われているのは、ランサムウェアによってデータが暗号化された場合に失われる更新情報を現在より減らすための対策です。その観点では、バックアップ頻度を高めるアが最も直接的です。
TSUNAGARU-ADVICE

まず押さえたいこと

この事例のリスクは、ランサムウェアによって最新データが使えなくなったとき、週1回のバックアップでは最大1週間分の更新情報を失うことです。この損失期間を短くするには、バックアップの取得間隔を短くする必要があります。

事例を読むときの判断軸

設問では「何を改善したいのか」を具体的に読み取ります。今回問題になっているのはバックアップ媒体の種類や処理速度ではなく、失われる可能性があるデータの期間です。週1回から毎日1回へ変更すれば、最大損失期間を1週間から1日程度まで短縮できます。遠隔地保管は災害などでバックアップ媒体ごと失うリスクへの対策であり、今回の主題とは異なります。

上位試験につなげるために

この考え方はRPO(目標復旧時点)につながります。バックアップ頻度を高めるほど、障害時に失うデータ量を減らせます。上位試験では、バックアップ頻度はRPO、復旧に掛かる時間はRTO、遠隔地保管は同一拠点災害への対策というように、対策がどのリスクを下げるのかを切り分けて考えましょう。